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法律相談Q&A

株式会社の取締役の賞与はどのように決定されるのですか。

1. 旧商法下における委員会等設置会社以外の株式会社の賞与については、報酬ではなく利益処分にあたるものとして、株主総会決議が必要とされていました(平成 17年改正前商法第281条第1項第4号、同法第283条)。取締役への賞与は功労報償として利益の一部分配であると一般的に理解されていたためです。

2. 会社法では、賞与を報酬等の1つとして明示し、委員会設置会社以外の株式会社について、定款または株主総会決議によって定めることとしました(会社法第 361条第1項)。その主な理由としては、(1)賞与も取締役の職務執行の対価と考えられること、(2)会社法では、一定要件を満たす会計監査人設置会社 において取締役会決議で剰余金処分が可能となったところ(会社法第459条第1項)、従来どおり賞与を利益処分とすると株主総会決議が不要となってしまう ことが挙げられます。

3.上記定款または株主総会決議で定める事項として、会社法は以下の形態ごとに区別して規定しています(会社法第361条第1項)。
第1に、金額の確定したものについてはその額を定めます(同法同条同項第1号)。実務上、定款でこれを定める例は少なく、株主総会決議によって総額の最高 限度額を定め、各取締役に対する配分額の決定は取締役会設置会社においては取締役会の決定、取締役会設置会社以外の会社においては取締役の過半数による決 定に委ねることが多いとされています。
第2に、金額が確定しないものについては、その具体的な算定方法を定めます(同法同条同項第2号)。その額が会社業績を示す指標等に連動する可変的な定め方がなされる場合などが挙げられます。
第3に、金銭でないものについては、その具体的内容を定めます(同法同条同項第3号。)低賃料による社宅の提供等の現物給付がその例として挙げられます。
なお、同法同条同項第2号又は第3号に掲げる事項の新設又は改定の議案を株主総会に提出した取締役は、当該株主総会において、具体的算定方法ないし具体的 内容を相当とする理由を説明しなければなりません(同法同条第2項)。株主としては、具体的算定方法や内容を見ただけではその必要性・合理性が必ずしも明 確にならないと考えられているからです。

4.定款または株主総会決議で報酬等の総額の最高限度額を定め、その枠内で個人別の報酬等の決定を取締役会の決議(取締役非設置会社では取締役の過半数の決 定)に一任した場合は、賞与がその枠内にとどまる限り、定款の定めまたは株主総会決議は不要です。なお、最高限度額を超えて取締役会(ないし取締役の過半 数)が賞与額を定めこれを支給したときは、その超過部分は違法・無効であり、当該取締役の不当利得となるものと考えられます。

5.各取締役の賞与額が具体的に定められた場合、その額は取締役と会社間の契約内容となるので、その後に当該取締役の職務内容に著しい変更があったとしても、 同人の同意がない限り、株主総会決議によってその額を減額することはできないと考えられます(報酬について述べたものとして、最高裁判決平成4年12月 18日民集46巻9号3006頁)。

6.なお、会社法上の委員会設置会社については、報酬委員会が取締役の個人別の賞与の内容に係る決定に関する方針を定め、その方針にしたがって、個人別に、上記第1ないし第3の区別にしたがって、それぞれ確定額、具体的算定方法、具体的内容を決定する必要があります(会社法第404条第3項前段、同法第409 条第1項ないし第3項)。

参考文献:会社法体系第3巻(江頭憲治郎・門口正人編集代表、青林書院)、会社法コンメンタール8(落合誠一編、商事法務)、Q&A新会社法の要点(第一東京弁護士会総合法律研究所会社法研究部会編、新日本法規出版株式会社)、株式会社法第2版(江頭憲治郎著、有斐閣)