法律相談Q&A

法人に関する法律Q&A

Q

テレビ会議方式による株主総会は可能でしょうか。

A

1.会社法では、旧商法のような招集地に関する規制が廃止され、会社法施行規則上、株主総会議事録に「株主総会が開催された日時及び場所(当該場所に存しない 取締役、執行役、会計参与、監査役、会計監査人又は株主が株主総会に出席をした場合における当該出席の方法を含む。)」の記載が必要となる旨の規定(会社 法施行規則72条3項1号)が置かれているのみです。
したがって、取締役は、株主総会の開催場所について特に定款に定めを設けることなく自由に定めることができるようになりました。
これには、会議体としての一体性が確保できるような措置が講じられている限り、複数の場所で株主総会を開催することも含みます。なお、かかる措置がなされないまま複数の場所で株主総会が開催された場合には、決議取消しや決議不存在等の問題が生じることとなります。
(なお、「過去に株主総会を開催した場所から著しく離れた場所」を株主総会の場所とする場合には、その理由を明らかにし、招集通知に記載しなければなりません(施行規則63条2号)。)
2.会議体としての一体性が確保できるような措置の具体的内容ですが、複数の会場について、出席者の状況の把握、質問・発言しようとする者の確認、現に発言している者が当該株主であることを確認することができるような措置など、情報伝達の双方向性と即時性が確保されるような 措置が必要となります(『論点解説 新・会社法 千問の道標』相澤哲・葉玉匡美・郡谷大輔編著 商事法務)。
例えば、役員らを映写する画面、複数の会場の株主席全体を映写する画面、発言する役員・株主を映写する画面をいずれの会場でも視聴することができ、役員のみならず株主も発言したいときには自由に発言できるようマイクが準備され、その発言を他の会場にも即時に伝えることができるような設備・環境が整っている ことが必要となると考えられます。
この点、取締役会の場合には、取締役らはお互いに素性を知っており、発言者が発言の前に氏名を告げれば、たとえその姿が映写されなくてもいかなる人物が発言しているのかはわかりますが、これと異なり、株主総会の場合は、株主がお互いの素性を知っていることは稀であるので、氏名を告げさせるだけでなく、発言 者の姿を映写し、それを役員及び他の株主らが視聴できるような措置が必要であると考えられます。
以上のような措置が十分に講じられるのであれば、テレビ会議方式により株主総会を開催することが可能であると考えられます。

Q

テレビ会議方式による取締役会は可能でしょうか。

A

1.テレビ会議方式による取締役会の開催について、会社法にはこれを規制する規定はなく、会社法施行規則において、取締役会議事録に「取締役会が開催された日 時及び場所(当該場所に存しない取締役、執行役、会計参与、監査役、会計監査人又は株主が取締役会に出席をした場合における当該出席の方法を含む。)」の 記載が必要となる旨の規定(会社法施行規則101条3項1号)が置かれているのみです。
2.この点、法務省民事局は、テレビ会議の方法による取締役会について、「取締役間の協議と意見交換が自由にでき、相手方の反応がよく分かるようになっている 場合、すなわち、各取締役の音声と画像が即時に他の取締役に伝わり、適時適格な意見表明が互いに出来る仕組みになっていれば、テレビを利用して取締役会を 開くことも可能である。」(平成8年4月19日法務省規制緩和等に関する意見・要望のうち、現行制度・運用を維持するものの理由等の公表について)との見 解を示していますので、これを遵守する限りテレビ会議システムによる取締役会の開催は可能です。
なお、電話会議の方法による取締役会について、「電話会議の方法による…取締役会の議事録は、出席取締役が一堂に会するのと同等の相互に充分な議論を行う ことができる会議の議事録として、適式な取締役会議事録と認められる」(平成14年12月18日民商3044号民事局商事課長回答)との見解も示されています。
以上を踏まえると、常に全取締役の姿がテレビ画面上に映写されるのであれば、相手方の反応がよく分かるといえ、また、発言したいときに自由に発言ができるようマイクが準備されていれば、取締役間の協議と意見交換が自由にできるものといえ、問題はありません。
次に、資料等の説明の際に取締役の姿がテレビ画面上に映写されない場合には、相手方の反応がよく分かるものとはいえず、要件を満たさないのではないかが問題となります。
この点、全く相手方の反応を見ることができない電話会議方式による場合でも、相互に十分な議論を行うことができるものであれば、適式な取締役会と認められるのですから、相手の反応がよく分かるとの要件は必ずしも重要なものではなく、むしろ、取締役間の協議と意見交換が自由にできるという要件こそが重要であるものと考えられます。
したがって、取締役間の協議と意見交換が自由にできると認められるような方式の場合、具体的には、ある取締役の発言が即時に他の取締役に伝わり、これを受けて他の取締役が即時に発言できるなどの音声的な設備が整っているのであれば、たとえ各取締役の姿が常にテレビ画面上に映写されない場合でも、適式な取締 役会として認められるものと考えられます。ただ、取締役らが資料等の説明をしている際にも、資料の映写と取締役らの映写を適宜切り替える措置を講じること ができれば、より望ましいものといえます。
また、マイクの設置方法ですが、各取締役が発言したい時に自由に発言ができるというものであれば、必ずしも1人1つずつマイクを準備する必要はなく、長机1つにマイクを1つ設置し、そこに取締役2名が着席するという方式でも問題はないものと考えられます。
ただ、マイクをONにしないと他の本店支店に発言内容が伝わらないとの点については、各取締役が自らスイッチ操作するだけで発言が他の本店支店に伝達できるのであれば問題ありませんが、各取締役のスイッチ操作のみならず、本店の事務局による音声切替の操作等が必要となるのであれば、発言したい時に自由に発 言ができるものとはいえず、適式な取締役会の開催とは認められない可能性もありうると考えられます。

Q

株式会社の取締役の賞与はどのように決定されるのですか。

A

1. 旧商法下における委員会等設置会社以外の株式会社の賞与については、報酬ではなく利益処分にあたるものとして、株主総会決議が必要とされていました(平成17年改正前商法第281条第1項第4号、同法第283条)。取締役への賞与は功労報償として利益の一部分配であると一般的に理解されていたためです。
2. 会社法では、賞与を報酬等の1つとして明示し、委員会設置会社以外の株式会社について、定款または株主総会決議によって定めることとしました(会社法第 361条第1項)。その主な理由としては、(1)賞与も取締役の職務執行の対価と考えられること、(2)会社法では、一定要件を満たす会計監査人設置会社 において取締役会決議で剰余金処分が可能となったところ(会社法第459条第1項)、従来どおり賞与を利益処分とすると株主総会決議が不要となってしまう ことが挙げられます。
3.上記定款または株主総会決議で定める事項として、会社法は以下の形態ごとに区別して規定しています(会社法第361条第1項)。
第1に、金額の確定したものについてはその額を定めます(同法同条同項第1号)。実務上、定款でこれを定める例は少なく、株主総会決議によって総額の最高 限度額を定め、各取締役に対する配分額の決定は取締役会設置会社においては取締役会の決定、取締役会設置会社以外の会社においては取締役の過半数による決 定に委ねることが多いとされています。
第2に、金額が確定しないものについては、その具体的な算定方法を定めます(同法同条同項第2号)。その額が会社業績を示す指標等に連動する可変的な定め方がなされる場合などが挙げられます。
第3に、金銭でないものについては、その具体的内容を定めます(同法同条同項第3号。)低賃料による社宅の提供等の現物給付がその例として挙げられます。
なお、同法同条同項第2号又は第3号に掲げる事項の新設又は改定の議案を株主総会に提出した取締役は、当該株主総会において、具体的算定方法ないし具体的 内容を相当とする理由を説明しなければなりません(同法同条第2項)。株主としては、具体的算定方法や内容を見ただけではその必要性・合理性が必ずしも明 確にならないと考えられているからです。
4.定款または株主総会決議で報酬等の総額の最高限度額を定め、その枠内で個人別の報酬等の決定を取締役会の決議(取締役非設置会社では取締役の過半数の決 定)に一任した場合は、賞与がその枠内にとどまる限り、定款の定めまたは株主総会決議は不要です。なお、最高限度額を超えて取締役会(ないし取締役の過半 数)が賞与額を定めこれを支給したときは、その超過部分は違法・無効であり、当該取締役の不当利得となるものと考えられます。
5.各取締役の賞与額が具体的に定められた場合、その額は取締役と会社間の契約内容となるので、その後に当該取締役の職務内容に著しい変更があったとしても、 同人の同意がない限り、株主総会決議によってその額を減額することはできないと考えられます(報酬について述べたものとして、最高裁判決平成4年12月18日民集46巻9号3006頁)。
6.なお、会社法上の委員会設置会社については、報酬委員会が取締役の個人別の賞与の内容に係る決定に関する方針を定め、その方針にしたがって、個人別に、上記第1ないし第3の区別にしたがって、それぞれ確定額、具体的算定方法、具体的内容を決定する必要があります(会社法第404条第3項前段、同法第409条第1項ないし第3項)。
参考文献:会社法体系第3巻(江頭憲治郎・門口正人編集代表、青林書院)、会社法コンメンタール8(落合誠一編、商事法務)、Q&A新会社法の要点(第一東京弁護士会総合法律研究所会社法研究部会編、新日本法規出版株式会社)、株式会社法第2版(江頭憲治郎著、有斐閣)

Q

株主総会での株主と役員との質疑応答の内容について、株主総会議事録にはどの程度具体的に記載すればよいでしょうか。

A

1.会社法施行規則72条3項2号は「株主総会の議事の経過の要領及びその結果」を株主総会議事録の必要的記載事項としている。
株主総会における株主と会社役員との質疑応答の議事録への記載の仕方についてであるが、規定がなく、質疑応答の内容についてどの程度具体的に記載するかは議事録作成者の合理的な裁量によるものと考えられる。
また、役員の回答内容につき議事録に記載すべきかであるが、これも議事録作成者の合理的な裁量によるものと考えられる。
2. もっとも、株主総会議事録が「総会に出席できない株主や債権者の閲覧・謄写に供する(会社法318条4項)ことによりこれらの者に権利行使の機会を保障する」(『株主総会の準備事務と議事運営』宮谷隆著 中央経済社)意義を有していることに鑑みれば、議案の審議や報告内容を補足すると思われる事項、株主及び債権者にとって重要な内容と思われる事項等を含む回答について、その要旨を議事録に記載するのが望ましいと言える。
役員の回答の要旨を議事録に記載する場合、議事録本紙の中で記載する方法(「○○氏から…との質問があり、○○取締役は…と回答した。また○○氏から…と の質問があり、○○取締役は…と回答した。」など。)、質疑応答の内容について別紙を設けて記載する方法(議事録本紙には「別紙のとおり株主との間に質疑応答があった。」と記載し、別紙において「質問要旨:(○○氏)…について説明されたい。回答内容:(○○取締役)…である。」と記載するなど。)などが ある。
3.なお、株主の質問に対し、会計参与(または監査役もしくは会計監査人)の回答内容が選任、解任、辞任に関する意見(会社法345条1項、4項、5項)に及 ぶ等、会社法施行規則72条3項3号列挙の意見又は発言にあたる場合は、その意見又は発言の内容の概要が株主総会議事録の必要的記載事項となる。この場合、条文上「内容の概要」と規定されている以上、意見又は発言の内容について、ある程度具体的な記載が必要となる。

Q

退職予定取締役が自己の退職慰労金額の決定について代表取締役に一任する決議に参加する場合、特別利害関係人(会社法369条2項)にあたりませんか。

A

質問のケースについて直接判示した判例はありませんが、「株主総会に提出する退職慰労金贈呈議案決定の取締役会決議における退職予定取締役は、株主総会に 付議すべき「原案」の決定ではあるが、利害関係の直接性から、特別利害関係人に該当するのであろう」(『会社法コンメンタール 機関[2]』296頁 落合誠一編 商事法務)という考え方があります(森本滋京都大学大学院法学研究科教授)。
この説に従えば、質問のケースの場合、株主総会に付議すべき「原案」の決定よりもより直接的に退職予定取締役が自らの退職慰労金額の決定に関わることとなり、例示のケース以上に利害関係を有することになると思われます。
したがって、退職予定取締役を取締役会決議に参加させるかどうかは最終的には会社の判断によることとなりますが、決議に参加させない方が望ましいものと思われます。

Q

会社が購入した機械に不良があった場合、どのような手段を採ることができますか。

A

会社が購入した機械に不良があった場合、メーカーに対し、(1)製造物責任法3条に基づく損害賠償請求や(2)不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条)を、販売会社に対し、(3)債務不履行に基づく損害賠償請求(民法415条)や(4)瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求(民法570条)をすることが 考えられます。それぞれの請求に必要な要件は以下のとおりとなります。
• 1 製造物責任法3条に基づく損害賠償請求
(1)要件
1 相手方が製造業者等であること
・「製造業者」とは、ⅰ当該製造物を業として(=同種の行為を反復継続して行うこと)製造、加工又は輸入した者、ⅱ自ら当該製造物の製造業者として当該製 造物にその氏名、商号、商標その他の表示をした者又は当該製造物にその製造業者と誤認させるような氏名等の表示をした者、ⅲ当該製造物の製造、加工、輸入 又は販売に係る形態その他の事情からみて、当該製造物にその実質的な製造業者と認めることができる氏名等を表示した者をいいます。
2 相手方が製造、加工、輸入又は氏名等の表示をし、引渡した製造物に欠陥があったこと
・「製造物」とは、製造又は加工された動産をいいます。
・「欠陥」とは、当該製造物の特性、その通常予見される使用形態、その製造業者等が当該製造物を引き渡した時期その他の当該製造物に係る事情を考慮して、当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいいます。
3 製造物の欠陥により他人の生命、身体又は財産が侵害されたこと
4 損害の発生及び額
5 要件3と4との因果関係
(2)備考
・契約関係がない場合にも主張できます。
・損害が当該製造物自体にしか生じなかった場合には、上記法律構成はできず、別の法律構成によらなければなりません。
・被害者が損害及び賠償義務者を知った時から3年、製造業者等が当該製造物を引き渡した時から10年経過した場合には損害賠償請求権は時効により消滅します。
・相手方が開発危険の抗弁(当該製造物の引渡し時における科学又は技術に関する知見によっては、当該製造物にその欠陥があることを認識することができな かったとの主張。)、部品製造業者の抗弁(当該製造物が他の製造物の部品又は原材料として使用された場合において、その欠陥が専ら当該他の製造物の製造業 者が行った設計に関する指示に従ったことにより生じ、かつ、その欠陥が生じたことにつき過失がないとの主張。)を主張することにより、責任を免れる余地があります。
• 2 不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条)
(1)要件
1.権利又は法律上保護される利益の存在 2.要件1に対する加害行為 3.要件2についての故意又は過失
4.損害の発生及び額 5.要件2と4との因果関係
(2)備考
・製造物責任法3条の要件を満たさない場合に問題となります。
・契約関係がない場合にも主張できます。
・一般的に、「過失」の立証は「欠陥」の立証に比べ難しくなります。
・被害者が損害及び加害者を知った時から3年、不法行為の時から20年経過した場合には損害賠償請求権は時効により消滅します。
• 3 債務不履行に基づく損害賠償請求(民法415条)
(1) 要件
1 債務が発生したこと
2 債務不履行の事実(履行が不完全であること等)があること
3 損害の発生及び額
4 要件2と4の因果関係
(2)備考
・契約関係がなければ主張できません。
・相手方に帰責性が不存在であることの立証責任があり、請求者側に「欠陥」、「過失」の立証責任がある製造物責任法3条に基づく損害賠償請求、不法行為に基づく損害賠償請求に比べ、一般に立証責任の点で有利となります。
・本来の債務の履行を請求し得る時から10年間行使しないときには、損害賠償請求権は時効により消滅します。
• 4 瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求(民法570条)
(1)要件
1 特定物(当事者が取引上個性に着目した物)を目的とする売買契約の成立
2 売買の目的物に隠れた瑕疵があること
・「隠れた」とは、取引上要求される一般的な注意では発見できないことをいいます。
・「瑕疵」とは、その性質・形状・効用などが約定された通常備えるべき性質を有しないことをいいます。
3 損害の発生及び額
(2)備考
・契約関係がなければ主張できません。
・大量生産・販売される不特定物については適用がありません。
・商人間の売買の場合、買主に検査通知義務があり、損害賠償請求が制限される場合があります(商法526条)。
・買主が目的物の瑕疵を知ってから1年以内に請求しなければなりません。

Q

動産譲渡登記について教えてください。

A

動産譲渡登記は、「動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律」(以下、「法」と言います。)によって創設されたものであり、これをもって動産譲渡の対抗要件とすることができる制度です。
動産譲渡登記は、法人が譲渡人となる場合に限られますが(法1条)、登記の対象は個別動産と集合動産とを問いませんし、譲渡の目的も真正譲渡目的と担保目的とを問いません。
動産譲渡登記の手続は、東京法務局に譲受人(譲渡担保権者)と譲渡人(設定者)が共同で申請することにより行います(法7条2項)。
登記事項としては、当事者、登記原因、登記の存続期間(原則として10年を超えることができない。)等が記録されます(法7条2項)が、特に重要となるのは譲渡対象となる動産の特定です。「動産の特質」により特定する方法と「動産の所在」により特定する方法の2種類がありますが、個別動産は「動産の特質」で、集合動産は「動産の所在」で特定するのが一般的です。
なお、集合動産譲渡担保の場合、民法上有効か否かがそもそも問題とされていましたが、判例は「その種類、所在場所及び量的範囲を指定するなどなんらかの方法で目的物の範囲が特定される場合には、一個の集合物として譲渡担保の目的となりうる」とし、目的物の明確な特定を要件としてその有効性を肯定しました。そのため、実務上は、登記事項の備考欄に詳細な情報を記録して、より明確に動産を特定することがよく行われています。
動産譲渡登記がなされると、当該動産について民法178条の引渡しがあったものとみなされます(法3条1項)。ただ、動産譲渡登記は民法上の対抗要件で ある引渡しと同等の効力しかない点には注意が必要です。つまり、動産譲渡登記がなされたからといってこれに先行する引渡しの効力が覆滅されるわけではあり ません。
動産譲渡登記は、動産譲渡の対抗要件具備を明確に公示しますので、外形から明らかでない占有改定(民法183条)を対抗要件とする場合に生じるおそれのあった紛争を予防する意味で大きな役割を果たすと考えられています。

Q

抵当権の登記の前に税金の差押登記が、さらに抵当権の登記の後に税金の参加差押登記がされている場合、先後関係はどうなるのでしょうか。

A

国税徴収法26条の規定により、まず、(1)抵当権設定の登記と国税及び地方税の法定納期限の古い順に従って、国税及び地方税に充てる総額と私債権に充てる総額とを定め(同条2号)、(2)同法12条から14条の規定により、国税及び地方税に充てる総額の中から国税、地方税それぞれに充てる金額を定め(同条3号)、(3)私債権に充てる総額を民法等の規定によりそれぞれの私債権に準じ充てる(同条4号)ことになります。
具体例として、競売の換価代金が1,700万円となった土地につき、納付期限が平成20年11月1日の国税(400万円)の差押登記が、次いで同年10月1日に被担保債権1,000万円の抵当権設定登記が、納付期限が同年9月1日の地方税(600万円)の参加差押(交付要求の一種)登記がなされていたとしましょう。
I 国税徴収法26条2号の規定により、抵当権設定の登記、国税及び地方税の法定納期限の古い順に従い、地方税に600万円、抵当権の被担保債権に1,000万円、国税に100万円充てることとなり、私債権にあてるべき金額の総額は1,000万円、国税及び地方税に充てるべき金額の総額は700万円となります。
II 同法26条3号の規定により、国税及び地方税に充てるべき金額の総額700万円は、法12条(差押先着手による国税の優先)の規定により、国税に400万円を充て、地方税に残額の300万円を充てます。
III 同法26条4号の規定により、抵当権の被担保債権に1,000万円充てます。
(参照条文)
(国税及び地方税等と私債権との競合の調整)
第二十六条 強制換価手続において国税が他の国税、地方税又は公課(以下この条において「地方税等」という。)及びその他の債権(以下この条において「私債権」という。)と競合する場合において、この章又は地方税法その他の法律の規定により、国税が地方税等に先だち、私債権がその地方税等におくれ、かつ、当該国税に先だつとき、又は国税が地方税等におくれ、私債権がその地方税等に先だち、かつ、当該国税におくれるときは、換価代金の配当については、次に定めるところによる。
一 第九条(強制換価手続の費用の優先)若しくは第十条(直接の滞納処分費の優先)に規定する費用若しくは滞納処分費、第十一条(強制換価の場合の消費税等の優先)に規定する国税(地方税法の規定によりこれに相当する優先権を有する地方税を含む。)、第二十一条(留置権の優先)の規定の適用を受ける債権、第五十九条第三項若しくは第四項(前払賃料の優先)(第七十一条第四項(自動車等についての準用規定)において準用する場合を含む。)の規定の適用を受ける債権又は第十九条(不動産保存の先取特権等の優先)の規定の適用を受ける債権があるときは、これらの順序に従い、それぞれこれらに充てる。
二 国税及び地方税等並びに私債権(前号の規定の適用を受けるものを除く。)につき、法定納期限等(地方税又は公課のこれに相当する納期限等を含む。)又は設定、登記、譲渡若しくは成立の時期の古いものからそれぞれ順次にこの章又は地方税法その他の法律の規定を適用して国税及び地方税等並びに私債権に充てるべき金額の総額をそれぞれ定める。
三 前号の規定により定めた国税及び地方税等に充てるべき金額の総額を第八条(国税優先の原則)若しくは第十二条から第十四条まで(差押先着手による国税の優先等)の規定又は地方税法その他の法律のこれらに相当する規定により、順次国税及び地方税等に充てる。
四 第二号の規定により定めた私債権に充てるべき金額の総額を民法(明治二十九年法律第八十九号)その他の法律の規定により順次私債権に充てる。
(差押先着手による国税の優先)
第十二条 納税者の財産につき国税の滞納処分による差押をした場合において、他の国税又は地方税の交付要求があつたときは、その差押に係る国税は、その換価代金につき、その交付要求に係る他の国税又は地方税に先だって徴収する。
2 納税者の財産につき国税又は地方税の滞納処分による差押があつた場合において、国税の交付要求をしたときは、その交付要求に係る国税は、その換価代金につき、その差押に係る国税又は地方税(第九条(強制換価手続の費用の優先)の規定の適用を受ける費用を除く。)に次いで徴収する。
(交付要求先着手による国税の優先)
第十三条 納税者の財産につき強制換価手続(破産手続を除く。)が行われた場合において、国税及び地方税の交付要求があつたときは、その換価代金につき、先にされた交付要求に係る国税は、後にされた交付要求に係る国税又は地方税に先だって徴収し、後にされた交付要求に係る国税は、先にされた交付要求に係る国税又は地方税に次いで徴収する。
(担保を徴した国税の優先)
第十四条 国税につき徴した担保財産があるときは、前二条の規定にかかわらず、その国税は、その換価代金につき他の国税及び地方税に先だって徴収する。
(法定納期限等以前に設定された抵当権の優先)
第十六条 納税者が国税の法定納期限等以前にその財産上に抵当権を設定しているときは、その国税は、その換価代金につき、その抵当権により担保される債権に次いで徴収する。

Q

債権を譲り受けた後、その債権につき譲渡を禁ずる旨の合意がなされていたことを初めて知りましたが、譲受債権につき債務者に対して請求することはできますか?

A

民法第466条第2項但書により、債務者は譲渡人との間で交わした譲渡禁止特約を「善意の第三者」に対抗することができません。債権の譲受人は「第三者」に当たりますので、譲受人が譲渡禁止特約につき「善意」であれば譲受債権を有効に取得する事ができます(ここでいう「善意」とは、譲渡禁止特約の存在を知らないことを指します。)。
ただ、善意であっても重大な過失があるときは譲受債権を有効に取得できないと考えるのが判例ですので(最判昭和48年7月19日)、少なくとも譲渡禁止特約の存否につき一定程度の調査を行っていることは必要です。
また、債権を有効に譲り受けたとしても、債務者に対してこれを請求するためには債務者対抗要件すなわち譲渡人から債務者に対する通知又は債務者の承諾がなければなりませんので(民法467条1項)、請求するに当たりいずれかの債務者対抗要件を備える必要があります。

Q

債権譲渡人が債務者に対して債権譲渡通知書を配達証明付きで発送しましたが、内容証明郵便ではありませんでした。配達証明のおかげで到達日は明らかなのですが、これは「確定日付のある証書」による通知といえるのでしょうか?

A

「確定日付のある証書」(民法第467条第2項)の意義に関しては、民法施行法第5条で限定的に定められており、これらに該当しない場合には「確定日付のある証書」には当たらないと考えられます。
その第1項柱書・同項第6号は郵便法に規定する内容証明の取扱に係る認証をなしたるときに限り確定日付のある証書とすると規定しており、郵便法は「内容証明」と「配達証明」を明確に区別してそれぞれ別個の取扱方法として規定していますので、「確定日付のある証書」とするためには内容証明郵便による必要があります。
従って、配達証明のみで発送した通知書は、「確定日付のある証書」に当たらないと考えられます。

Q

譲受債権の譲渡人が債務者に対して債権譲渡通知をする前に破産し、破産管財人が選任されました。債務者による債権譲渡の承諾もありません。私が債権者であることを破産管財人に対抗することはできるでしょうか?

A

最判昭和58年3月22日が、指名債権の譲受人は、譲渡人が破産宣告(現行破産法における破産手続開始決定)を受けたときは、宣告前に民法第467条第2項所定の対抗要件を具備していない限り、債権の譲受けをもって破産管財人に対抗しえないと判示しており、破産管財人を「債務者以外の第三者」として取り 扱っています。
従って、第三者対抗要件である確定日付による通知又は承諾を備えていない以上、譲受債権を取得したことを破産管財人に対抗することはできません。

Q

債権差押命令が送達された後、支払前に、仮差押命令が送達されてきた場合について教えてください。

A

第1 差押債権額と仮差押債権額の合計が被差押債権額を超えている場合
1.第三債務者は、被差押債権全額に相当する金銭につき、被差押債権の債務の履行地を管轄する法務局に供託しなければなりません(義務供託、民事執行法第156条第2項、民事保全法第50条第5項)。供託書は、供託所に備付けのOCR用供託書を用いるのが一般的です。
2.上記供託後、(1)事件の表示、(2)差押債権者及び債務者の氏名又は名称(3)供託の事由及び供託した金額を記載した書面に供託書正本を添付して被差押 債権の執行裁判所(債権差押命令を発した裁判所)に届け出なければなりません(事情届、民事執行規則第138条)。事情届は、通常、債権差押命令の第三債 務者に対する送達の際、注意書と共に同封される扱いになっております。
3.供託するには交通費その他の費用がかかります。この費用は、被差押債権の債権者が自己の債務を履行せず債権差押え及び債権仮差押えを受けたために発生した 費用ですから、被差押債権の債権者の行為によって増加した弁済費用として、その増加額は被差押債権の債権者が負担すべきものです(民法第485条但書)。
したがいまして、第三債務者は、上記供託に要する費用として法令上認められた費用について一定の算定基準に基づいて算出された額を上記執行裁判所に請求することができます(民事訴訟費用等に関する法律第28条の2第1項)。ただし、この請求は事情届を提出するまでに請求しなければならないことに注意する必 要があります(同条の2第2項)。
なお、供託するに際しては、予め上記費用を控除して供託することはできません。上記費用については、手続費用と認められる範囲について、供託により形成された配当財団から支払を受けることになります。
第2 差押債権額と仮差押債権額の合計額が被差押債権額を超えない場合
1.この場合、上記供託をする義務はありませんが、供託する権利はあります(権利供託、民事執行法第156条第1項、民事保全法第50条第5項)。
2.供託する場合の手続きは、第1と同様になります。ただし、供託する義務がない場合ですので、供託に要する費用の請求はできません。

Q

当社が物品を預けた先が倒産し、運送業者がその倒産会社に対する債権があるから留置権があるはずだといって返してくれませんが、そうなのでしょうか。

A

下記表のとおり、商事留置権は第三者の物について成立しませんから、留置権は成立しません。これに対して民法上の留置権、運送人の留置権は第三者の物であっても成立しますが、当該物の運送賃やそれに付随した費用に限られますので、極めて限定されますから、それを返済して取り戻すことが可能です。なお、破産した場合には民事上の留置権は効力を失います。

民法上の留置権商事留置権運送人の留置権
根拠規定民295条商521条商589条で準用する商562条
成立要件
  • 当事者双方が商人であること
  • 当事者双方のために商行為によって生じた債権であること(占有所得の原因行為(寄託・委任など)が債務者との間の商行為たることを要し、占有自体は第三者から取得しても可)
  • 債権が弁済期にあること
  • 被担保債権は、運送品に関し受け取るべき報酬・運送賃その他委託者のためにした立替または前貸しであること。
    ※ 運送品とは当該運送契約の目的たる運送品をいう。(結果として、被担保債権と留置物たる運送品との間には関連性がなければならないことになる。) ※ 損害賠償請求権にまで及ばない。
  • 各債権が弁済期にあるか否か争いあり。必要説が通説。
    ※ 委託者が商人であることは不要。
留置物と被担保債権との間の牽連性 必 要 不 要
※ 但し、被担保債権が債権者と債務者との取引によって生じたことを要するから、他人から譲り受けた債権に留置権は認められない。
必 要
目的物の所有権の要否 不 要 必 要(但し、占有取得時のみで足る) 不 要
特約による排除 可 能 可 能 可 能
先取特権 あり(民311,318) 特別の先取特権(民311,318)→別除権あり(破65) 運送賃・付随の費用につき自己の手持ちにある運送品の上に先取特権を有する(民318)
留置権の効力 競売権あり(民執195) 民法の一般原則(民296以下)による。 運送品に関して受け取るべき報酬・運送賃、その他委託者のためにした立替または前貸しに限り、運送人として特殊の留置権あり。
債務者破産の場合の破産財団への効力 失 効
(破93Ⅱ)
別除権あり(破65) 別除権あり(破65)
留置権の効力 競売権あり(民執195) 商法に規定なく民法の一般原則(民296以下)によるので、競売権あり。 破産や会社更生の場合に商事留置権の一種として特別の効力あり(破92,93、会社更生123 228Ⅰ)
Q

会社更生法の開始決定を受けた会社から、工事の依頼が来ました。請けてきちんと代金が貰えるでしょうか。

A

管財人が注文者となる場合、本債権は、管財人が事業継続を遂行するうえでなした取引行為によって生じた債権ですので、会社更生法第127条第5号の更生会社の業務及び財産に関し管財人が権限に基づいてした資金の借入れその他の行為によって生じた請求権にあたり、 共益債権となります。
共益債権は、原則として、更生計画認可の決定の前後を問わず、その履行期に応じて随時に弁済されます(会社更生法第132条第1項)。したがって、たとえば、月々の出来高払いの約定で請けるなどすれば、各期日の到来により随時弁済されることになります。もっとも本件更生会社の財産が共益債権の総額を弁済するのに足りないことが明らかになった場合には、未払いであった債権額の割合に応じて按分されることになります(会社更生法第133条第1項)。
したがっ て、管財人に対し、本件債権の支払時期についてよく確認しておくこと、並びに各回の代金受領について厳しく管理し請求と受領確認を怠らないようにしておく ことが重要です。なお、破産手続に移行した場合、本件更生手続における共益債権は、財団債権となり、随時弁済の対象となります(会社更生法第254条第6項)。財団債権の支払いに破産財団が不足する場合は、案分弁済となります。

Q

弊社では業務の繁閑にバラつきがあり、忙しい時期は常に法定労働時間を超えてしまうのですが、常に時間外労働として割増賃金を支払わなければならないのでしょうか。

A

変形労働時間制を導入すれば、一定の範囲で、1日8時間、1週間40時間という法定労働時間(労働基準法32条)を超えて労働させても、割増賃金の支払いが不要になります。
具体的には、御社の業務の繁閑状況にあわせて、1ヶ月単位・1年単位・1週間単位の変形労働時間制の中から、単位期間内の所定労働時間を平均して1週間に40時間を超えないものを選択して導入することができます。
まず、毎月末のみ多忙という場合には、1ヶ月単位のもの(同法32条の2)が適切です。就業規則その他これに準ずるもの又は労使協定にて定め、これを労働 基準監督署に届出することにより導入できます。その際、単位期間、その起算日、各週・各日の労働日・労働時間等を予め特定することが必要です。ただし、就 業規則等で労働日・労働時間を予め特定することができないときには、就業規則等では基本事項(始業終業時刻、勤務の組み合わせ方、勤務割表の作成・周知方 法など)のみを定め、単位期間開始前までに勤務割表により具体的に特定・周知する方法も可能です(昭和63年3月14日基発第150号)。
次に、年末や年度末のみ多忙という場合には、1年単位のもの(同法32条の4)が適切です。労使協定及び就業規則にて定め、これらを労基署に届出することにより導入できます。その際、適用労働者の範囲、対象期間、労働日・労働時間、有効期間等を予め特定することが必要です。ただし、労働日・労働時間につき 対象区間を1ヶ月以上に区分し、就業規則等では基本事項のみを定めた上、区分期間開始の30日前までに勤務割表等により特定・周知する方法も可能です。なお、1年単位のものについては、労働日数は原則280日以内、連続労働日数は原則6日以下、労働時間は1日10時間以内、1週52時間以内など、同法施行 規則による特別の制限に注意しなければなりません。
最後に、1週間単位のもの(同法32条の5)ですが、御社が「小売業、旅館、料理店、飲食店であって常時30人未満の労働者を使用するもの」(同規則12条の5)である場合に限り、週所定労働時間数を示して労使協定を締結し、これを労基署に届出することにより導入できます。その上で、労働者に対して1週間の各日の労働時間を予め書面により通知することで、1日につき10時間まで割増賃金の支払いなく労働させることができます。なお、変形労働時間制を導入したからといって、労基法の定める割増賃金支払義務が免除されるわけではありません。変形労働時間制は、業務の繁閑に併せて単位期間における法定労働時間の弾力的な配分を可能にするのみであり、実労働時間が一定の範囲を超えれば、その超えた部分は時間外労働として割増賃金の支払対象となります。

Q

この度、特殊法人と取引を始めることになりました。交際等にあたり、注意すべき点はありますか。

A

国や地方公共団体との取引において公務員と交際等をする場合と同様の注意が必要です。とりわけ、贈収賄 規制に抵触するような行為は避けなければなりません。また、贈収賄規制に抵触しないと考えられるときでも、特殊法人等の職務の公正を疑わせるような働きかけを行うことは避けるべきです。
まず、国家公務員の職業倫理については、下記のような規制があります。
(1)刑法の贈収賄罪(刑法197条以下)により、賄賂の収受・供与等につき処罰の対象となります。 具体的には、「公務員が、その職務に関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたとき」は、当該公務員(収賄者)は5年以下の懲役という刑事責任 を問われます。請託を受けた場合や、不正行為の対価として賄賂を受け取る場合には、さらに重い刑事責任を問われることになります。 また、公務員に対して「賄賂を供与し、又はその申込若しくは約束をした者」、すなわち贈賄者も3年以下の懲役又は250万円以下の罰金という刑事責任を問われます。 なお、ここでの「賄賂」とは、公務員の職務に関する不正の報酬としての一切の利益をいい、人の需要または欲望を満たすものであればこれに当たりますので、 金銭や飲食物の提供は言うまでもなく、公私の職務その他有利な地位を与えたりすることも含まれます。ただし、一般社会における慣習ないし社交的儀礼の範囲 内であれば「賄賂」に該当しないので、個別の検討が必要となります。
(2)次に、国家公務員倫理法及び国家公務員公務員倫理規程により、以下のような行為が禁止されています。
1.贈与(規程3条1項1号)
2.供応接待(規程3条1項6号ないし8号)
3.貸付(規程3条2号、3号)
4.役務提供(規程3条1項4号)
5.未公開株式の譲受け(規程3条1項5号)
※1、2について、広く一般に配布するための記念品の授受、職務として出席した会議等で簡素な飲食物の提供を受けること、多数の者が出席する立食パーティー等は許容されます(規程3条2項)。
※2の飲食について、公務員が自己費用負担する場合には許容されます。ただし、自己費用が1万円を超える場合には、倫理監督官への届出が必要とされます(規程8条)。
次に、特殊法人等の職業倫理について、国家公務員の職業倫理に準じて下記のような規制があります。
(1)贈収賄規制について
個別の特殊法人に関する法律の中で、贈収賄に関する罰則が規定されています。
特別刑法ではあるものの、賄賂性の判断等については、刑法上の贈収賄罪と同様に考えることになります。
(2)倫理規程の作成について
国家公務員倫理法第42条(特殊法人等の講ずる施策等)により、1.法律によって特別に設立されたこと、2.職員がみなし公務員であること、3.政府の出 資を受けていることの3要件を充足すると、「特殊法人等」として国家公務員倫理法・国家公務員倫理規程に準じた施策を講じなければなりません。
なお、各社の具体的な倫理規程については、国家公務員倫理規程をそのまま用いるのではなく、独自の企業倫理規程を設けている会社が多いようです。
(3)特殊会社の子会社について
子会社そのものが特別法により設立されていない限り、親会社について定める特別法の規制は原則として及びません。また、親会社と子会社は、出資比率の如何にかかわらず全く別の法人であり、当該子会社の職員はみなし公務員には当たりません。
もっとも、子会社の職員であるからといって安心するのは危険です。贈収賄規制にはかからなくても、倫理上問題になることは大いに考えられるからです。
以上から、国や地方公共団体との取引において公務員と交際等をする場合と同様の注意が必要です。

Q

重層下請工事で3次下請負会社が倒産した場合について教えてください。 (1)4次下請負会社は、特定建設業の許可を受けた元請会社に対し、未払の下請負代金を請求できますか。 (2)4次下請負会社の従業員は、同元請会社に対し、未払賃金の支払を請求できますか。

A

(1)について
4次下請負会社と元請会社との間には直接の契約関係がありませんので、契約に基づく代金請求はできません。また、民法ないし建設業法にも代金請求を根拠づける規定はありませんので、法律に基づく代金請求もできません。
ただし、元請会社は、国土交通大臣又は都道府県知事から、未払い下請負代金について、適正と認められる金額の立替払その他適切な措置を講ずることの勧告を 受ける可能性があります(建設業法41条第3項)。なぜなら、同条項における「他の建設業を営む者」には2次下請負人以下の者も含まれ、「損害」には下請 負代金の支払遅滞による損害も含まれると解されているからです。
もっとも、上記勧告はあくまでも勧告であって、元請会社の自由な意思に基づく救済を期待するものに過ぎず、法的な強制力は伴わないと考えられています。
(2)について
4次下請負会社の従業員は、(1)と同様の理由で、契約ないし法律に基づく未払賃金の支払請求はできません。
ただし、元請会社は、国土交通大臣又は都道府県知事から、当該建設工事における労働の対価として適正と認められる賃金相当額の立替払その他適切な措置を講ずることの勧告を受ける可能性があります(建設業法41条第2項)。
もっとも、上記勧告が法的な強制力を伴わないと考えられている点は(1)と同様です。
なお、未払賃金の消滅時効は2年とされておりますので(労働基準法115条)、まずは未払賃金が消滅時効にかかっているかどうか調査することが必要でしょう。

個人に関する法律Q&A

Q

建物借賃減額請求の裁判手続はどのようになっているのでしょうか。また、建物借賃減額請求の効力が発生するのはいつでしょうか。

A

動産譲渡登記は、「動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律」(以下、「法」と言います。)によって創設されたものであり、これをもって動産譲渡の対抗要件とすることができる制度です。
動産譲渡登記は、法人が譲渡人となる場合に限られますが(法1条)、登記の対象は個別動産と集合動産とを問いませんし、譲渡の目的も真正譲渡目的と担保目的とを問いません。
動産譲渡登記の手続は、東京法務局に譲受人(譲渡担保権者)と譲渡人(設定者)が共同で申請することにより行います(法7条2項)。
登記事項としては、当事者、登記原因、登記の存続期間(原則として10年を超えることができない。)等が記録されます(法7条2項)が、特に重要となる のは譲渡対象となる動産の特定です。「動産の特質」により特定する方法と「動産の所在」により特定する方法の2種類がありますが、個別動産は「動産の特質」で、集合動産は「動産の所在」で特定するのが一般的です。
なお、集合動産譲渡担保の場合、民法上有効か否かがそもそも問題とされていましたが、判例は「その種類、所在場所及び量的範囲を指定するなどなんらかの方法で目的物の範囲が特定される場合には、一個の集合物として譲渡担保の目的となりうる」とし、目的物の明確な特定を要件としてその有効性を肯定しました。そのため、実務上は、登記事項の備考欄に詳細な情報を記録して、より明確に動産を特定することがよく行われています。
動産譲渡登記がなされると、当該動産について民法178条の引渡しがあったものとみなされます(法3条1項)。ただ、動産譲渡登記は民法上の対抗要件である引渡しと同等の効力しかない点には注意が必要です。つまり、動産譲渡登記がなされたからといってこれに先行する引渡しの効力が覆滅されるわけではありません。
動産譲渡登記は、動産譲渡の対抗要件具備を明確に公示しますので、外形から明らかでない占有改定(民法183条)を対抗要件とする場合に生じるおそれのあった紛争を予防する意味で大きな役割を果たすと考えられています。

Q

借りているマンションの貸主が破産して破産手続きの通知が来ました。敷金は戻りますか。

A

賃貸人が破産した場合の取り扱いですが、賃料支払債務を負担している賃借人は債務不履行とならないために、賃料を支払わざるを得ません。
しかし、それでは将来の敷金返還請求権を有している賃借人に酷ですから、支払に際し、賃料の寄託請求を破産管財人にすることができます(破産法70条)。 なお、敷金返還請求権を失わないため、賃借人は別途敷金返還請求権につき、破産債権の届け出をしておく必要があります。
賃借人が寄託請求をすると、破産管財人は、返還義務を負う敷金の範囲内で賃料を寄託します。寄託された金額は、破産手続きの最後配当の除斥期 間内までに賃貸借契約が終了し、賃借人が立ち退いて敷金返還請求権が現実化したとき、賃借人が支払うべき債務と相殺されて残額が賃借人に返還されます。これに対し、最後配当の除斥期間内までに賃貸借契約が終了せず、したがって敷金返還請求権が現実化しない場合には、破産事件における債権者に配当されてしまいます(破産法201条2項)。
以上からすると、賃貸人が破産した場合で、敷金返還請求権が比較的多額の場合には、契約に期間内解約条項がある場合に限りますが、その定めに従い、賃借人側から賃貸借契約を解約して敷金の返還を受けておくという方法も考えられます。

Q

賃貸人が不存在となった場合、賃貸借契約の更新はできますか。

A

賃貸人が死亡し相続人が全員相続放棄をして不存在になるなど、賃貸人が不存在になった場合、契約条項に規定されている合意更新はできません。
もっとも、期間の定めのある建物賃貸借の場合、借地借家法26条1項本文の適用により、当事者が期間の満了の1年前から6ヶ月前までの間に、(1)相手方に対して更新しない旨の通知又は2.条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなされます(法定更新)。
なお、法定更新後の賃貸借契約は期間の定めのないものとされ(借地借家法26条1項但書)、当事者はいつでも解約の申入れをすることができます(民法617条1項)。賃借人から解約の申入れを行う場合は、民法617条1項2号により解約の申入れの日から3箇月経過後に契約が終了します。また、賃貸人から解約の申入れを行う場合は、申入れに際し正当事由(借地借家法28条)が必要で、正当事由がある場合には、解約の申入れの日から6月経過後に契約が終了します(借地借家法27条1項)。

Q

賃貸借契約が法定更新となった場合、連帯保証人の責任はどのようになりますか。

A

(1)民法619条は、賃貸借契約につき黙示の更新がなされたときは、賃借人の提供した敷金以外の担保は消滅 する旨規定しており、右趣旨によれば、第三者がなす保証債務も更新後には及ばないとも考えられますが、判決例は、法定更新の場合も原則として連帯保証人の 責任が存続することを認めています。
例えば、法定更新後の連帯保証人の責任について争われた東京地裁昭56.7.28判決は、「借家法の規定を受ける建物賃貸借は期間の更新が原則であり、 いわば期間満了と同時に更新の効果が自動的に生じる客観的な制度ともいえるもので、実際においても、賃借権は更新によって存続することは常識化しており、 賃貸借の保証債務はほぼ一定のもので、保証人の予想しない多額のものが通常発生しないことからしても、保証人たる第三者といえども、予め、賃貸借が更新に より存続することを十分に予想でき、また予想すべきであるから、保証人と賃貸人との間で特約がない以上、原則として、賃貸借更新後も賃借人の債務を保証す る責任は存続する」と判示しています。
また、合意更新に関する事案ではありますが、最高裁平9.11.13判決も「建物の賃貸借は、一時使用のための賃貸借等の場合を除き、期間の定めの有無に かかわらず、本来相当の長期間にわたる存続が予定された継続的な契約関係であり、期間の定めのある建物の賃貸借においても、賃貸人は、自ら建物を使用する 必要があるなどの正当事由を具備しなければ、更新を拒絶することができず、賃借人が望む限り、更新により賃貸借関係を継続するのが通常であって、賃借人の ために保証人となろうとする者にとっても、右のような賃貸借関係の継続は当然予測できるところであり、また、保証における主たる債務が定期的かつ金額の確 定した賃料債務を中心とするものであって、保証人の予期しないような保証責任が一挙に発生することはないのが一般であることなどからすれば、賃貸借の期間が満了した後における保証責任について格別の定めがされていない場合であっても、反対の趣旨をうかがわせるような特段の事情のない限り、更新後の賃貸借か ら生ずる債務についても保証の責めを負う趣旨で保証契約をしたものと解するのが、当事者の通常の合理的意思に合致するというべきである。」と上記東京地裁 判決と同趣旨の内容を述べています。
(2)もっとも、同最高裁判決は「賃借人が継続的に賃料の支払を怠っているにもかかわらず、賃貸人が、保証人にそ の旨を連絡するようなこともなく、いたずらに契約を更新させているなどの場合に保証債務の履行を請求することが信義則に反するとして否定されることがあり 得る」とも判示しており、また、東京地裁平成10.12.28判決は、同最高裁判決を引用した上で、1.賃貸人が、賃借人との間で合意更新に至らず、法定更 新となった旨を連帯保証人に直ちに伝えていなかったこと、2.賃借人が賃料を延滞しているにもかかわらず、連帯保証人に対しその旨を直ちに伝えていなかった こと、3.従前は合意更新の度ごとに連帯保証契約書を新たに作成していたが今回の法定更新の際には連帯保証契約書が作成されなかったこと等を認定し、法定更 新後に負担した賃料等の債務については連帯保証責任を負わない特段の事情があったと判示しています。
(3)以上を踏まえ検討しますと、契約条項に「丙は、乙と連帯して、契約期間中(合意更新及び法定更新された場合 も含む)本契約から生じる乙の一切の債務を負担する」などと記載されているような場合には、「(当初の)賃貸借の期間が満了した後における保証責任につい て格別の定め」(上記最高裁判決参照。)があるものと認められ、法定更新後も連帯保証人の責任は存続するものと認められます。
ただ、賃貸人が不存在となった場合の管理会社としては、念のため、従前の契約期間満了後直ちに、賃貸借契約が法定更新された旨を連帯保証人に通知し、新たに連帯保証人契約をするのが得策と言えるでしょう。

Q

1.離婚をする際の手続きの概略を教えて下さい。
2.離婚に伴い法律上問題となる事項について教えて下さい。

A

1.について
まず、離婚の手続きには、(1)協議離婚、(2)調停離婚、(3)審判離婚、(4)裁判離婚があります。
(1)協議離婚は、夫婦双方の離婚の合意により離婚届を市町村役場や区役所に提出してする離婚のことをいいます。
(2)調停離婚は、夫婦間で離婚の合意ができない場合や、離婚の合意はできても離婚に伴う条件(養育費や財産分与など)について合意ができない場合に、家庭裁判所における調停委員の関与の下に行う離婚のことをいいます。
(3)審判離婚は、調停に付されている離婚事件について調停成立の見込みがないが、なお審判が相当であるとされる場合に、家庭裁判所の判断で行われる離婚のことをいいます。もっとも、審判離婚の成立数は全国で1年間に50件程度に止まっております。 
(4)裁判離婚は、調停離婚が成立しなかったときに、離婚を請求する側が他方の配偶者を被告として家庭裁判所に離婚の訴えを提起することによってする離婚のことをいいます。裁判離婚は、ⅰ配偶者に不貞行為があること、ⅱ配偶者から悪意で遺棄(正当な理由なく同居義務・扶助義務等を履行しないこと)されるこ と、ⅲ配偶者の生死が3年以上明らかでないこと、ⅳ配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないこと、ⅴその他婚姻を継続し難い重大な事由(暴行・虐待、勤労意欲の欠如・浪費、性的異常など)があることのいずれかを満たさなければ認められませんし、たとえこれらの事由が認められても、裁判所の判断に より離婚が認められない場合もあります。なお、調停前置主義により、調停手続を経ていない訴えの提起は原則として認められていません。
2.について
離婚に伴い法律上問題となる事項としては、夫婦間の法律関係として、(1)婚姻費用の分担、(2)離婚給付(財産分与、慰謝料、年金分割)(3)戸籍・氏が、親子間の法律関係として、(4)親権、(5)養育費、(6)戸籍・氏などがあります。
(1)婚姻費用とは、夫婦と未成熟子によって構成される婚姻家族が、その資産・収入、社会的地位に応じた通常の社会生活を維持するのに必要な費用であり、 夫婦が互いに分担するものとされています。夫婦が別居している場合に、一方から他方への生活費の支払として問題となります。
(2)離婚給付のうち、財産分与は、夫婦の夫婦財産を清算分配し、かつ離婚後における一方の当事者の生計の維持を図ることを主な目的としたものであり、慰 謝料は、相手方の有責行為によって離婚に至った場合に、これによって被る精神的苦痛を賠償するものです。財産分与と慰謝料は別個の制度ですので、財産分与後に慰謝料請求をすることもできますが、財産分与について慰謝料の要素をも含めて定めることもできます。
また、近時、離婚時に厚生年金・共済年金について分割を可能とする離婚時年金分割制度も創設されました。
(3)婚姻によって氏を変更した配偶者は、離婚により、原則として、婚姻中の戸籍から除かれ、婚姻前の氏に戻りますが、例外的に、戸籍については、離婚の届出と同時に届け出ることにより新戸籍を編成することができ、氏については、離婚の日から3か月以内に届け出ることにより離婚の際に称していた氏を称する ことができます。
(4)親権の内容としては、身上監護権(未成年子を身体的に監護・保護する権限や、身分行為についての代理権などが含まれます。)と財産管理権があり、父母が離婚する場合、いずれか一方を親権者と定めなければなりません。
したがって、協議離婚をする場合には離婚届に親権者を記載しないとそもそも離婚届自体受理されませんし、裁判離婚の場合には、裁判所が父母のいずれか一方を親権者と定めることになります。
なお、親権者とは別に、親権の内容の一部である身上監護権(未成年子を身体的に監護・保護する権限のみに限ります。)のみを行使する監護権者を定めること もできます。この場合、親権者は身上監護をすることはできず、それ以外の財産管理権や身分行為についての代理権のみを行使することとなります。
(5)養育費とは、未成熟子が独立の社会人として成長自立するまでに要する全ての費用、つまり衣食住の費用、教育費、医療費、適度の娯楽費などをいい、親権の有無にかかわらず、親はこれを支払うべき義務があります。養育費は、原則として成年に達する時期まで支払うこととなりますが、子の就職・進学状況、親の資力、学歴、その他家庭環境を考慮して延長または短縮されることがあります。
養育費については、協議離婚をする場合、まずは夫婦間の協議で決定することとなりますが、協議が整わない場合は、調停を申し立てることとなり、裁判離婚をする場合には、離婚訴訟の付帯処分として申し立てることとなります。
なお、養育費の算定については、実務上、東京・大阪養育費等研究会の発表した算定表が広く参考とされています。
http://www.courts.go.jp/tokyo-f/saiban/tetuzuki/youikuhi_santei_hyou/
(6)子の戸籍・氏については、両親が離婚するに至っても、それだけで子の氏は変更されず、子は親の離婚後も婚姻中の戸籍筆頭者の戸籍に残ったままとなります。例えば、夫の氏を名乗っている場合は、夫が戸籍の筆頭者で、離婚により妻が子を引き取っても子の氏は元夫のままとなります。両親の離婚後、親の一方の氏を称し、その戸籍に移りたい場合には、子本人または子が15歳未満の時には親権者が家庭裁判所に子の氏の変更許可申立をすることとなります。
以上に述べた離婚に伴う法律上の問題点は、あくまで実務上よく問題となる事項について大まかに説明したものであり、具体的事案により扱いも異なり、また以上の他にも様々な法律上の問題点が生じ得ますので、まずは当事務所までご相談ください。

Q

裁判の途中で被告が死亡し、相続人全員が相続放棄した場合、裁判はどうなりますか。

A

(1)まず、被告に訴訟代理人がついていない場合は、訴訟は中断します(民事訴訟法第124条第1項第1号)。相続人全員が相続放棄したときは、訴訟手続を受継させるため、原告が相続債権者として死亡被告の相続財産を管理する相続財産管理人選任の申立てを行 うことができます(民法第952条第1項)。民法第951条の「相続人があることが明らかでないとき」には、相続人全員が相続放棄をした場合も含まれると 解されるからです。そして、相続財産管理人が選任された後、相続財産法人を被告とする訴訟受継の申立てをすることになります。
次に、被告に訴訟代理人がいる場合には、上記と異なり訴訟は中断しません(民事訴訟法第124条第2項)。この場合には、そのまま弁論を終結して死者名義の判決がなされる場合も理論的にはありえますが、当事者適格の面で不安が残るでしょうから、やはり上記同様、相続財産管理人選任の申立てを行うことになる のが通常と考えられます。
(2)相続人全員の放棄があるというためには、配偶者(民法第890条)、第1順位の相続人(被相続人の子、民法 第887条第1項)、第2順位の相続人(被相続人の直系尊属、民法第889条第1項第1号)、第3順位の相続人(被相続人の兄弟姉妹、民法第889条第1項第2号)の全員の相続放棄が確定することが必要です。特に、第3順位の相続人には代襲相続が認められるので(民法第889条第2項、第887条第2項)、すべての相続人の相続放棄申述受理が終了するまでにはある程度時間がかかります。
相続放棄の申立ては、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対して行います。申立を受けた家庭裁判所は、申立人の意思を確認するため照会を行うことが通常ですので、その照会により申立人の相続放棄の意思が確認された段階で相続放棄の申述が正式に受理されることになります。
実際に相続人全員が相続放棄するのにどのくらいの時間がかかるかについては、相続人の数にもよるので一概には言えませんが、戸籍の調査によって第3順位の相続人まで割り出すのに時間がかかること、相続放棄の熟慮期間3カ月(民法第915条第1項)の起算点が各相続人にとり各人のために相続の開始があったこ とを知ったときとされているため、例えば第1順位の相続人による相続放棄申述受理がなされなければ第2順位の相続人の相続放棄の熟慮期間は開始しないことからすれば、すべての相続人の相続放棄申述受理が終了するまでには、ある程度の時間がかかることに留意する必要があります。
(3)なお、相続財産管理人選任の申立てをしてから、実際に相続財産管理人が選任されるまでには、1.5か月~2か月ほどかかるとされていますが、各家庭裁判所によって運用が異なることもありますので、まずは被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に問い合わせることが望ましいです。

Q

相続人の一人に予め相続を放棄させたいのですが、何か方法がありますか。

A

日本の民法上、相続開始前に予め相続を放棄することはできません。 相続開始前の時点で採りうる方法としては、遺留分の放棄(民法第1043条第1項)が考えられます。
この方法は、(1)被相続人が誰かに全財産を相続させる旨の遺言書を作成し、かつ、(2)放棄する相続人が家庭裁判所に対して遺留分放棄の許可申立てを行い許可審判を受ける必要があります。
(1)については、公正証書遺言(民法第969条)を作成するのがよいでしょう。公正証書遺言は、自筆証書遺言と異なり遺言書の紛失や偽造の危険を防ぐこ とができ、また、自筆証書遺言及び秘密証書遺言と異なり方式違反等により無効となるおそれがなく、家庭裁判所による検認も不要とされるからです(民法第1004条第2項)。
(2)の遺留分とは、一定の相続人が相続開始後に法律上取得することができる相続財産の一定の割合のことをいいます(民法第1028条以下)。この遺留分は、相続放棄と異なり、相続開始前に放棄することができますが、被相続人の住所地を管轄する家庭裁判所に遺留分放棄の許可申立てを行ったうえで許可の審判 を受ける必要があります。家庭裁判所の許可が必要とされた理由は、不当な圧力その他により無理やり遺留分放棄を強いられることを防止するためと考えられています。
遺留分放棄の許可申立てにあたり必要とされる添付書類は、遺留分を放棄する相続人及び被相続人の戸籍謄本、被相続人の住民票ならびに遺留分を放棄する対象となる被相続人の財産目録になります。
実務的には、(1)遺留分を放棄する相続人自身が申立を行わなければならないこと、(2)被相続人が遺留分を放棄する相続人に対して財産を開示することに難色を示し、財産目録を作成したがらないことなどから、なかなか申立てしづらいようです。また、裁判所は、その相続人が被相続人からある程度の生前贈与を受けていない場合には、申立人の真意による遺留分放棄か慎重に判断するようです。

Q

私は破産手続開始決定を受けましたが、滞納した国民健康保険料を払わなければなりませんか?

A

国民健康保険料は、「市町村が徴収する保険料」に該当し、地方自治法231条の3第3項に規定する法律で定め る「歳入」とされています(国民健康保険法79条の2)。「歳入」については、督促を受けたものが不納付の場合、地方税法の滞納処分によって処分すること が可能とされますが(地方自治法231条の3第3項)、地方税法によれば、市町村税に係る滞納処分については国税徴収法に規定する滞納処分の例によるとされています(地方税法331条第6項)。
そうしますと、国民健康保険料は、破産法でいうところの「国税徴収の例によって徴収することのできる請求権」となりますので、同請求権を含む上位概念である「租税等の請求権」(破産法97条4号参照)として扱われることになります。
「租税等の請求権」については、破産法上、その発生時期及び具体的納期限(その期限までに納付がなされない場合に督促状が発せられさらに滞納処分がなされることになる期限)により、次のような債権に種別されます。
まず、「租税等の請求権」が破産手続開始決定前の原因に基づく債権にあたる場合には、具体的な期限が破産手続開始決定当時未到来ないし具体的納期限から1年を経過していない債権については財団債権(148条1項3号)となり、具体的納期限から1年を経過した債権については優先的破産債権(98条1項)となります。
破産財団が十分に形成できれば破産財団から支払われますので破産者個人が支払わなくて済みますが、破産財団が十分に形成されなければ未払分につき破産者個人が自由財産の中から支払いをすることとなります。なぜなら、「租税等の請求」は非免責債権とされ破産手続によっても免責されないからです(253条1項1号)。
次に、「租税等の請求権」が破産手続開始決定後の原因に基づく債権にあたる場合、それが「破産財団の管理、換価及び配当に関する費用の請求権」(148条1項2号)に該当すれば財団債権(148条1項2号)となり、同債権に該当しなければ破産者の自由財産を引き当て とする債権になりますが(なお、今回は個人破産を前提としておりますので、破産法上政策的に認められた劣後的破産債権(97条4号、99条1項1号)に該当することはないと考えられます。なぜなら、上記劣後的破産債権は破産者の自由財産が観念できない法人破産の場合に債権者が不利益を被らないよう例外的に設けられた規定と解されているからです)、「租税等の請求権」としての国民健康保険料は、一般的にサービスを受ける対価と考えられているので、「破産財団の管理、換価及び配当に関する費用の請求権」には該当しないと考えられています。そうしますと、国民健康保険料の未払分については破産者個人が自由財産の 中から支払いをすることになります。
もっとも、自治体の条例等で保険料の減免が認められていれば、申請により保険料の減免ないし徴収猶予を受けられることもありますので(国民健康保険法77条)、まずは自治体の担当課に問い合わせをするのがよいでしょう。

Q

中古マンションを競売にて購入したのですが、前所有者が何年もの間滞納していた管理費やその遅延損害金を管理組合に全額支払わなければなりませんか。

A

原則として支払義務がありますが、時効消滅しているとして支払わなくてよくなる場合があります。
マンション区分所有法は、1.区分所有者が共用部分、建物の敷地若しくは共用部分以外の建物の附属施設につき他の区分所有者に対して有する債権又は規約若しくは集会の決議に基づき他の区分所有者に対して有する債権、2.管理者又は管理組合法人がその職務又は業務を行うにつき区分所有者に対して有する債権については、債務者たる区分所有者の特定承継人に対しても行うことができるとしています(同法第8条、第7条)。中古マンションの競落人はこの特定承継人にあたるため、前所有者が滞納していた管理費のみならず、管理規約に定めがあれば同規約に基づき、管理規約に定めがなくても民法が定める年利5%(民法第404条)の遅延損害金を支払わなければなりません。
もっとも、最高裁は、「管理費等の債権は、…基本権たる定期金債権から派生する支分権として、民法169条所定の債権に当たるものというべきである。」と判示し(最高裁判決平成16年4月23日)、管理費等の債権については5年で消滅時効が成立することを認めました。
したがって、中古マンションの競落人は、前所有者が滞納した管理費及びその遅延損害金については5年分についてのみ支払義務があり、それ以上遡った分については消滅時効を援用して、支払うことを拒むことができます。 

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